戦闘機


今のウクライナ戦争について、「西側はウクライナに、自国の利益のための代理戦争をさせている」と言う、一種の陰謀論がある。「西側の特に軍需産業は、商品も売れ株価も上がって潤っており、その軍産業界の手先に国が存在している」という「論」だ。

 

たしかに軍需産業は、この戦争のおかげで儲かっているし株価も上がっている。だが、「彼らが米国をはじめ西側諸国の政治を操っている」という論理は乱暴だろう。ロビー活動はもちろんあるだろうが、民主国家であり開明的国民が見張っている限り、そこまで軟弱でない。

 

ここでいったん、軍需産業側の視点に立ってみよう。彼らの商売人としてのメリットは、大きく言って2つある。すなわち、①型落ち兵器の体の良い在庫処分と、②新型兵器の現実でのフィールドテストだ。兵器開発のネックの一つは、実体験や使い勝手を試すチャンスが限られていることだ。

 

フィールドテストをすれば、使い勝手も机上でなく実体験として分かるし、次に開発すべき新兵器の姿も具体的に見えてくる。公表されてはいないがおそらくウクライナには、戦略立案や情報の専門家のほかに、兵器製造の技術者も、データ取りのために内々に派遣されていることだろう。

 

ただこれらのチャンスは、言ってみれば結果論であって、決して本来目的ではない。政治を主導しているのは国及び国民であって、その国民は国の諸行為や判断が、あくまでも米国や西側がこれまで積み上げてきた最大価値である、自由と民主主義を守りかつ広げるためだと知っている。

 

実際50年前に、米国は沖縄を返還した。これはロシアがいつまでも北方領土を返さないのと、対照的だ。米国がそこまで紳士的だとは言わないが、そう言った民主的行動を取って見せるのが、国民団結と言う自国の利益になる。そういう仕組みの国が、一業界のために右顧左眄するとは思えない。